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「J列-21番 コーラ」

生まれてはじめて好きなひとと行ったデートは映画だった。彼は大きいサイズのポップコーンを買ってくれて、ふたりで一緒にそれを食べながら映画を観た。確か、人類が滅亡してしまった地球にひとり生き残った主人公が奮闘するハリウッド映画で、わたしはすこし泣いた気がする。静かなエンドロールが流れるなかでその余韻に浸りきって、すっかり隣に座るひとの存在を忘れていた。ぼんやりと劇場が明るくなってふと横を向いたとき、余...

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いつかのゆめ

僕と彼女が出会った日のことはよく覚えている。16年前の今日、14時15分。天気は快晴だった。小さくて、触ったら壊れてしまいそうな彼女を抱えたひとは、僕に言った。「この子はお前のためにつくられたロボットだよ。大切に大切に、育てておくれ。」僕は彼女から目を離せなかった。大切に、育てる。必死に頷いた。それから月日は過ぎた。しあわせな日々だったと思う。彼女の笑顔を見ると心があたたかくなったし、彼女が泣いていると...

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国語の時間

確か、九月だったと思う。二時間目、国語の時間だった。前の席の相沢さんが、ぽとんと僕の机に紙切れを落とした。ルーズリーフをちいさく折りたたんだ端に、きれいな字で「佐々木まで」と書いてあった。よくみんながやっている手紙交換ってやつだなあ、と特に何も気にせず、僕はそのまま後ろへ紙をまわした。しばらくして、後ろからまた紙がまわってきた。「佐々木まで」の「佐々木」の部分が二重線で引かれて、「相沢」に変わって...

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風の残り香

ふにゃりと目を細めて笑う顔が素敵だった。少し低くてかすれている声が魅力的だった。くせのあるショートヘアも、ちょっぴり上を向いている鼻も、頬に広がるそばかすも。彼女と話していると心が穏やかになった。彼女の笑顔を見ていられるだけで幸せだった。僕と彼女が出会ったのは、小さな人形工房だった。その工房で、僕は人形作りの見習いをしていて、その日はやっと人形をひとつ作り終え、一段落着いたところだった。人形には、...

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